人間というものは画一的ではないし、数式で割り切れるものでもなし、だからと言って、放っておいて良いわけでもなし、愛というそんな簡単な表現で接するものでもなし、そんなものひっくるめてそれが人間なのだ、という懐の広さがある。
多くの点で、なぜ、このようにすべきなのかを理詰めで説明しており、有益。おすすめ度
★★★★☆
・ 私に真偽の確認が出来ないところは一部あるが、かなり多くの点は理詰めで説明されており、有益。例えば、(1)東京で蕎麦は先だけしかつゆに付けないことが多いが、それはそばつゆが濃いため。(2)トロばかりを鮨屋で食べるものではない。それはトロでの利益は薄く、他の鮨と組み合わせて採算をとっている鮨屋の立場を考えるべきであるため(現在でもそうであるかどうか私は知らないが、店の立場を考える点が必要なのは今でも同じだろう)。
・ 仕事の段取りについて詳しく説明している。鍼の治療を受ける間に小説の構想を整える、取材旅行の前に、体調不良になるのを見越して多めに原稿を書いておく、など。
・ 他にも含蓄のある説明がある。人のいやがる仕事をもっと進んでやる、身銭を切ることの有用性など、人間性に関わるところが参考になった。
・某料亭の件の後に読んで興味深いのは、食べきれないと思った場合は料理に手を付けずに下げてもらう、誰が食べたっていいわけだから、との趣旨の意見(P.83)。昔はこういうことは容認されていたのかもしれない。まあ、刺身まで別の客に出すとは池波は想定していないだろうが。
時代を超越した男の作法を味あわせてくれる、人生の教科書。この値段で買えるなんて、安い。おすすめ度
★★★★★
タイトルにいつわりの無い素晴らしい内容のエッセイ集。
僕にとっては座右の書として、常に身近においておきたい本だ。
若い編集者に向けて、毎回ねたを決めて(例えば、寿司の食べ方とか、酒の飲み方とか、家の建て方とか)語りかけていくのだが、その内容がとてもすかっとしていて、参考になる。
著者も言っているのだが、時代が変わってきているために、今では機能しないような部分もあるのかもしれない。
しかし、自分が読み進む限りは、まったくそういったところは感じなかったし、いつまで経っても変わることの無い、日本の男の作法を包括して世界観を味あわせてくれる、こうなりたいと思わせてくれる素晴らしい人生の教科書だと思う。
尊敬していますが
おすすめ度 ★★★☆☆
私は池波先生の大ファンです。
特に、鬼平犯科帳の「悪を知らずに悪を斬れるか」というところなどには、しびれてしまいます。また文体も好きです。
何気ないようでまったく隙のない文体。
さて、本書です。
正直な感想を申し上げます。
男の作法には金がかかって、私には到底無理です。
「わさびをしょうゆにとかない」・・・常識として知ってはいますが、
この前提になっているのは、本わさびを使っていることでしょう。
例えば、私が同僚と居酒屋チェーンにいくとします。
そこでもわさびをとかずに食すべきなのでしょうか。
見るからにときわさび、あるいはチューブモノでも。
そういうことではないんだよ、心意気というものだよと
おっしゃるかもしれませんが。