プーランク:歌曲集(2)
修道士と無頼漢の顔を併せ持つと評された作曲家・プーランクの歌曲集。時に死への憧憬すら思わせるメランコリックな曲から、歌詞を見ながら聴いていると吹き出してしまうようなユーモラスなエスプリに満ちた曲まで幅広く表現するのは、決して簡単ではないと思う。このディスクでこれに挑戦しているロットは持ち前の表情豊かな声を駆使して哀しみと滑稽の間を見事に往来しており、聴き応えは十分である。
この両極の表現力を確かめるのに最も相応しい曲は「ルイ・アラゴンの詩による2つの歌」であろう。
1曲目「C」はぞっとするほど妖艶な、聴きようによれば宗教的ともとれる暗い情熱に満ちている。ロットの歌声はデリケートに震え、抑制された感情の昂ぶりを慎重に歌い出す。
これに対して2曲目「みやびやかな宴」はひどく狂騒的に陽気な歌で、シャンデリアがきらめくようなロジェの華やかなピアノとイギリス出身の(!)ロットが挑戦するフランス語による凄まじい早口が見物だ。初めて聴いた人は必ず唖然とするであろう単純な音楽であるが、これもまた生粋のパリジャン・プーランクならではの味。スピードの生み出す快楽に酔いしれるのも楽しい。今のところ私が聴いた「みやびやかな宴」の中ではこの録音が最も速く、ゴージャスで、楽しい。