殺意は幽霊館から―天才・龍之介がゆく! (祥伝社文庫)
御値段も手ごろで,それ程ボリュームもないし,手軽にサクッと読むのにはちょうど良い作品です。ちょっとした推理クイズのような感覚で楽しむには良いかも。この作者の作品ですから,一応水準はクリアしてるとは思いますが。ページ数がページ数ですから,あくまでもそれなりだと思います。
4000年のアリバイ回廊 (光文社文庫)
前作「3000年の密室」とは異なり
今回は、現在の殺人事件から始まる
時刻表が掲載されていることやタイトルが示す通り
バリバリのアリバイトリックです
また、4000年前の謎は結構わかりやすいかも
現在が文字を多用した文化であるのに対し
縄文時代が、音声による文化であった点など
縄文時代について書かれた部分は非常に魅力的であった
犯人たちの部屋 ミステリー傑作選 (講談社文庫)
このシリーズも本編だけでも50巻を超えました。毎回毎回素晴らしいミステリーの短編が紹介され、非常に楽しみなアンソロジーになっています。今回も、粒ぞろいの10作品が所収されています。
「ラストドロー」(石田衣良)「蕩尽に関する一考察」(有栖川有栖)「招霊」(井上夢人)「盗まれた手紙」(法月綸太郎)「瑠璃の契り」(北森鴻)「死者恋」(朱川湊人)「絵の中で溺れた男」(柄刀一)「走る目覚まし時計の問題」(松尾由美)「神国崩壊」(獅子宮敏彦)「Y駅発深夜バス」(青木知己)
どの作品を取っても本格ミステリーの楽しさを満喫させてくれます。
個人的には、「瑠璃の契り」の雰囲気が大好きです。
「蕩尽に関する一考察」「走る目覚まし時計の問題」の犯罪ではない軽さもいいです。
どの作品を取っても実に印象的な作品ばかりでした。
時を巡る肖像 (実業之日本社文庫)
絵画修復士・御倉瞬介を主人公とした六話を収録した連作短編集。
柄刀氏は本格ミステリー魂が強すぎて、しばしば小説としての出来を少し損なっている。
本作は本格ものももちろんあるが、そうでは無い作品もある。
ジャンル小説色が薄まり、バランスが非常に良い短編集となっている。
ピカソ、フェルメール、モネ、安井曾太郎、デューラーなどの名画に秘められた犯罪や因縁。
それらを思慮深い審美眼をもって理論的に解体していく。
ロマンチストな面もある柄刀氏らしい作品だった。
北森鴻著「深淵のガランス」も絵画修復士を主人公としたミステリーだ。
こちらは絵画の資産価値に起因する暗部や贋作を扱っている。
対比して読むとおもしろいかも。