釣りキチ三平(1) (講談社漫画文庫)
(1)長編について
この巻収録は第1章「水のプリンセス」。
釣り大会が開催され、その表彰式で、優勝した三平が初めて読者の前に姿を現すといった演出がうまいと思います。その優勝に文句をつけた人との勝負という展開も申し分なく、和解も良いです。別巻の第2章「カルデラの青鮒」や、第4章「三日月湖の野鯉」(三平の兄貴分であり親友でもある魚紳が初登場)などに見られる田舎の風景も美しくて素敵です。
(2)短編 この巻収録の「ゴロ引きゴンベ」。
亡き恋人の故郷へやって来た娘は三平と出会う。そこへ現れたのが荒くれ者ゴンベ。彼は釣り人と諍いを起こすが、それには理由があった。
穏やかな風景と、むせ返るような夏の匂いが紙面から感じられた、泣ける作品です。短編にも傑作が多いと思います。
釣りキチ三平 平成版(5)三平inカムチャツカワヒール川編 (KCDX (1960))
1~4巻は平成版とは言え、三平の故郷が舞台であることもあり、従来の三平の雰囲気が強いと感じた。三平周辺のキャラも平成の割りにレトロなのは従来通りで、それはそれでイチファンとして安心できるものであったが、多少の意外性も欲しかった。
さて、5巻は近くて遠い国のロシアのカムチャツカでサケ科の魚を釣りまくることを期待をしたのだが、その前に著者の視線(三平の視線)でのカムチャツカ情勢なども紹介されているところはリアリティーを追求する矢口氏らしいところである。
日本では河川の上流部の渓流でひっそりと生きるサケ科の魚達が、カムチャツカでは大河の住人として悠然と泳いでいる様はゲームフィッシュファンならずとも是非見てみたいと感じた。