100曲クラシック=ベストが10枚3000円=
演奏家はナクソスの演奏家なので、確かに一般的にはあまり有名ではありませんが、演奏の水準はどれも高いものです。また、フェイドイン・フェイドアウトがないこと、全てデジタル録音で音質もばらつきがない点が、東芝等のものより優れていると思います。エイベックスですがCCCDでなくちゃんとしたCDですので安心してください。
どうしてもカラヤン等の有名な人の演奏で聞きたい(有名な人の演奏が必ずしも良い演奏とは限りませんが)というのならともかく、6枚に無理やり100曲押し込んでフェイドイン・フェイドアウトがあるものを聞くより、10枚にそれぞれの楽曲が高水準の演奏できちんと全部入っているほうが良いと思います。
特にクラシック初心者の方は、さわりだけのより、きちんと全部入っているこちらを選ぶべきです。ベテランの人へも、もちろんこちらをお薦めします。
必ず役立つ 吹奏楽ハンドブック コンクール編
大阪府立淀川工科高等学校吹奏楽部顧問の丸谷明夫先生監修と書かれると吹奏楽関係者や吹奏楽に興味を持つ者は手に取るでしょう。まして「コンクール編」と銘打たれているわけですから。
丸谷先生の文は「はじめに」の2ページだけです。また導入編として第1章に「コンクールに参加する!」とあり、参加するための流れやスケジュールと7ページの分量で書かれてあり、第2章で「サクラのコンクール必勝列伝」という6ページの分量で漫画が記してあります。内容はオーソドックスですが、あえてこの箇所を漫画にする必要もないでしょう。
初めてコンクールに取り組む吹奏楽の顧問や現役の部長が心覚えとして知っておくことを確認するのには有益でしょう。情報と言うのはあればあるだけ役立つと思います。ただ、もう少し多くのページを費やして掘り下げた内容を期待したのも事実です。なにしろ「コンクール編」という文字は重みをもって伝わってきますので。
第3章では、ホルスト作曲『組曲第1番』を取り上げて、各パート別に練習したり演奏するポイントが記されていました。各楽器のパートリーダーはこの箇所は必読でしょう。また新米指揮者にとってもそれぞれの楽器の特性は知っておく必要がありますので、是非マスターして欲しい内容だったと思います。
この『組曲第1番』という選曲はいいですね。譜面ヅラは平易でありながら、合奏するとアンサンブルの良さが感じられ、和声の展開とメロディの美しさが特徴と言えるでしょうから。
76ページ以降の「合奏の心得」では、丸谷先生指揮の淀川工科高等学校吹奏楽部の練習風景が書かれていましたが、内容のある言葉が並んでいました。流石に何回もコンクールを制してきた方の練習の重みは違います。
83ページ以下の上級編では「スコアの読み方」が書かれています。確かに高校生にとっては「上級」かも知れませんが、指揮をする場合は必須の訓練ですので、実践で繰り返し理解して欲しいでしょう。ここももう少し深い内容も掲載してほしいですね。上級編なら尚更です。なお、「はじめての和声学」は書かれているように「基本中の基本」でしょうから、もっと別の本で深く知る必要はあると感じました。もっともこのあたりはどこまで丁寧に記述すればよいか判断に迷うところでもありますが。
私の好きな曲―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)
ほぼ20年ぶりの再読。新潮文庫版を何度ひもといたことか。
改めて読んでみても、初読の感動が甦ってくる。冒頭のベートーヴェンのカルテットとピアノソナタで感極まってしまった。シューベルトの『グレイト』の章では、楽音が耳に鳴り出す。
そして必ず気に入りのディスクを架けて、吉田の文章を読み返してしまう。何度でも読みたくなる。
モーツァルトのクラリネット協奏曲での「かわいそうなブラームス」という痺れる文句。
ストラヴィンスキーでの叶わぬ初恋(?)記の上手さ。
音楽を叙述してこれ以上の文章は皆無なのではないか。吉田独特(と当時は思われた)の「かしら」という文末。見事である。