ある殺し屋とやくざと一人の女が、2億のヤクを奪う。しかし、やくざと女は殺し屋を・・。「色と仕事の区別がつかねぇ男はごめんだ」、「女は色と仕事の区別がつかねぇ、ごめんだな」。この二つのセリフを聞けただけでも僕的には満足だ。大映時代の成田三樹夫はニヒルでクールでメッチャ渋い。この作品では、まだまだ青い若造を演じ、渋さは若干薄いが、このセリフをはいた様はとびきりカッコよかった。市川雷蔵も時代劇のイメージが強く、セリフ回しなど若干違和感があったが、寡黙で冷静な殺しのプロをさすがの存在感で演じている。立ち回りなどさすがといった感じ。僕の世代としては野川由美子がとても可愛くてビックリした。お綺麗な人とは思ってたけど。
森一生の集大成おすすめ度
★★★★☆
オープニングちかくで墓地のヨコに建つボロボロのアパートを描写するところに、
二つのズームショットが連続するのだが、この映画の撮影は実はあの
溝口健二の戦後作品になくてはならない片腕、宮川一夫である。
1967年といえばすでにベテランの域に達していた彼のアイデアであったと
される(森一生監督談)このショットに、常に新しいテクニックに挑む彼の
キャメラマン魂を思う。その宮川の強いキャメラへのこだわりと、監督森の
早撮りの駆け引きの妙が、主演市川雷蔵と、野川由美子、成田三樹夫、
小池朝雄といった癖の強い俳優陣と絡まるとき、この時代の大映京都が
目指した、後に和製ノワールと呼ばれる現代劇のひとつの頂点を見せた。
高度成長期の頂点で、戦争の記憶へのひとつの区切りをつけた時代
とも重なり、増村保造、石松愛弘による脚本のもつ独特の戦争への
視点をうまくメタファー(隠喩)として見せるインサートショットや、赤色へのこだわ
り、そしてフィナーレで成田を通してみせるユーモアなど、森(監督)自身も
言うように、彼の集大成的な作品。
それにしてもこの時代の邦画のおそるべき実力の、これはほんの片鱗
にしかすぎないことを、現代邦画人はもっと真摯に受け止めるべきだろう。
市川雷蔵、最高にかっこいいです
おすすめ度 ★★★★★
市川雷蔵の珍しい現代劇のシリーズ物。タイトル通り殺し屋が依頼を遂行するまでを淡々と描く。森一生監督の抑えた演出は見事。こういうのをシャープな演出というのか。市川雷蔵は現代劇でも最高にかっこいい。宮川一夫による撮影も見事で、カラー作品ながらモノクロのように冷淡で抑えたトーンの映像は素晴らしい。最近の派手な作品に見慣れた観客には受けないだろうが、傑作中の傑作の待望のDVD化は嬉しい限り。
成田三樹夫や小池朝雄といった名優の演技が見られるのも嬉しい。続編「ある殺し屋の鍵」とともに必見。