神童
たまたま、沢木耕太郎氏の著作で本作について触れていたので
手にしてみました。正直、戦後間もない、日本が貧しかった時代に
ここまで世界を驚かせるような才能を持った少年がいた事に驚きを
覚えました。
ただ、彼を襲った悲劇は、悲劇ではあるのだけれど避けようのなかった
ものなのかな、と言う気もしました。小学生の頃から友達も殆どおらず、
体育の授業も見学ばかりしていた、全てをヴァイオリンに捧げた少年。
ヴァイオリン以外何も知らない・出来ない少年を海外に独りで送り出して
何か起きないと考えない方が異常なのではないか、と強く感じた。
そういう意味では個人的には父である季彦氏の教育感には強い違和感を
覚える。
結局のところ、優れた芸術家となるためには、ヴァイオリンだけでは駄目で
幅広い教養を身につけるべきなのではないか、と言うのが実感。
面白かったのは、最終章で筆者が当時の関係者にインタビューしようとして
「ルーザーである彼を今さら本に書くことに何の意味があるのか」と強い疑問
を呈しているところ。沢木氏の「敗れざる者たち」に代表されるように、日本人は
才能がありながら挫折した人を描くノンフィクションが好きだが、アメリカ人は
そうでは無いのかな、と思ったところ。
いずれにせよ、色々と考えさせられる本ではあります。
神童/幻のヴァイオリニスト~渡辺茂夫
はっきりいってこの渡辺茂夫の演奏はイッている
テクニック的にもっとうまいヴァイオリニストは確かにいる。しかしこのCDに収録されているシューベルトのアヴェマリアやショパンのノクターンのような表現性を求められる曲で最も人を感動させることのできるヴァイオリニストはこの渡辺茂夫である。
続・神童
音楽の演奏はテクニックだけではないことがよくわかる1枚だと思いますよ。聴いていると素人耳にも只ならぬ迫力が伝わってきます。残念ながら廃盤となってしまっているようですが、安く見つけたならば是非聴いてみて下さい。