ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)
以前から気になっていたシリーズだが、ついにこの「ローマ人の物語」を読みはじめている。もともと、歴史には疎い方で、特に世界史のことはごく基本的なことも知らない。大事だとわかっていても、勉強のようにつまらなく感じてしまうのであった。
ところが、この塩野七生氏の著作は文句なしにおもしろく読める。基礎知識がなくても、わかりやすい。そして、人間や社会の本質を理解する上で実にためになる知恵がつまっているのである。おもしろい理由のひとつは、人間のひとりひとりに焦点をあてて丁寧に描かれていることだろう。そして、その見方が肯定的なのがよい。
現在シリーズの半分ほど読んだところだが、どの巻も粒ぞろいで退屈することなく読みすすめられている。
ヴェネツィア物語 (とんぼの本)
綺麗な本。写真も文章も文句なし!ただ、ただ…、36頁のカ・レッツォーニコの写真は、不可。これは、ヤーコポ・サンソヴィーノの手になる、カ・グランデ(コルネール)の写真です。ようく似ていて間違えても仕方ないかも。ただし、16世紀と18世紀の違いは厳しい。ロンゲーナ/Gとマッサーリの手になる、カ・レッツォーニコは、例の安藤忠雄による内部の改装が有名な、カ(パラッツォ)・グラッシ(これもG・マッサーリによる)にほぼ対面して建つが、カ・コルネールは、グッゲンハイムの真向かいに建つ。宮下先生のイタリア本については、以前の山川出版社の本(『イタリア・バロック』)のときにも、間違い[ローマのサンティニャーツィオ教会堂の写真を、イル・ジェズー教会堂にしてある!]を読者カードにきわめて明確に書いたのですが(これ、いまだに無視されたまま!)、どうも、よく似た建物の区別ができていないよう。イタリア建築専門家の校閲がない、もしくは弱い。また、この上の、アッカデーミア美術館の写真も、側面部分の写真よりも、正面部分の写真のほうがよいと思います。昨年2011年の『芸術新潮』11月号をほとんど修正していないようです。シニョリーアをシニョーリアにしたり、ザッカリーアをザッカーリアにしたり、イタリア語の発音も気になります。