キャノンボ-ル・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ
コルトレーンの「天才」は、常識とまでに定着した称号ですが、
キャノンボールとて、デビュー時のキャッチコピー「チャーリー・パーカーの再来」
が示す通り、他を寄せ付けない圧倒的なスピード・テクニックと、類い稀なる
メロディセンスを併せ持った、希代の天才プレイヤーであります。
そんな同世代(当時30代前半)のライバル同士が、帝王マイルスの不在に、
静かに火花を散らす。
どこまでも流麗に、めくるめくようなメロディを紡ぎだすキャノンボール。
コルトレーンの、一瞬にして空気を変えるような、鮮烈なフレージング。
2人の天才の個性と才能がぶつかり合う、ジャズ史上、最もスポーティーで
スリリングな34分!
これが面白くなくて、ジャズの何が面白いか!
マイルス・デイヴィス青の時代 (集英社新書 523F)
著者のマイルス新書シリーズの第1作。私は本書を読むのが最後になったが、やはり年代順に本書から読み始めるのが望ましい。なぜなら、第2作以降では年表の不在が気になったが、本書冒頭に1926−91の年譜があるではないか。第2作以降もこの年譜を参考に読み進めるべきだろう。
ピカソの青の時代に相当するマイルスの青の時代として、著者はマイルスの生い立ちからアマチュア時代、プロ・デビュー、演奏スタイルの確立、アレンジャー/オーガナイザーとしての卓越した才能の開花の足跡を辿り、同時に至高の傑作カインド・オブ・ブルーに至るまでの数々の名盤(ディグ、ウォーキン、バグス・グル―ヴ、ラウンド・アバウト・ミッドナイト、マイルス・アヘッド、サムシン・エルス等)を名盤たらしめている秘密を探る。そして、この時代のマイルスと多くのモダン・ジャズの巨人との交感やケンカ・セッションの真相等も丁寧に明かす。
ジャズのどの作品を聴こうかと迷ったら、マイルスを聴くべきであり、ジャズ入門者はもちろん、40〜50年代のジャズに詳しい人にとっても新たな発見がある好著だ。
シュープリーム・セッションズ [DVD]
コルトレーンの演奏をビデオで見ることができる、というだけで感激してしまいます。テナー・サックスの持ち方、マウス・ピースのくわえ方、そしてブローしているコルトレーン。ソプラノ・サックスへ持ち替えた時の求道僧のような表情がいいですね。
マッコイ・タイナーのピアノの弾き方も個性がありました。ちょうどグレン・グールドのような姿勢と指使いかな、と思いましたが。
1959〜63年の間に行なわれたカルテットや他のメンバーとの演奏を収めています。
帝王マイルス・デイヴィスとのセッションの緊迫感もなかなかのものです。マイルスの目の鋭さが他のメンバーとは全く違うのに驚きますし、オーラが漂っていました。メンバーの演奏中にそでに引っ込み煙草をくわえて眺めているマイルスの珍しい演奏風景も収録されています。
途中の映像は、ギル・エヴァンスのオーケストラと主役のマイルス・デイヴィスのセッションにコルトレーンもいます、といった扱いでした。貴重な映像なのは間違いありません。
後半は、またコルトレーンが中心で、ソプラノ・サックスを軽やかに奏でている「My Favorite Things」には感激しました。CDでは何回も聴いてきた演奏ですが、真剣に吹いている姿がたまりません。当然CDとは若干演奏が異なりますが、ここでの演奏もステキな雰囲気が漂っています。エリック・ドルフィの巧みなフルート演奏は、とても巧いですし、これも素晴らしいジャズだと思いました。
映像は全てモノクロです。音質はCDと比較すると劣ります。それを超える映像の魅力がありますので。エリック・ドルフィ、エルヴィン・ジョーンズ、ジミー・ギャリソン、ポール・チェンバー、ジミー・コブなどモダン・ジャズの全盛時代のミュージシャンの姿を知りませんので、最後まで楽しめました。
カインド・オブ・ブルー+1
1959年作品ということだが、これ以来音楽業界は一体何をしていたのだろうと思うほど、新鮮で、今日のどのアルバムより新しい。
So whatは、ピアノのイントロ、ベースのあと、これまで聴いたこともなかったような新鮮な和音が弾かれる。終始ピアノがリードする。トランペットに次いで入ってくるコルトレーンはどう猛さを隠して、急に洗練されて聴こえる。アルトサックスの澄んだ高音は純粋に生理的に気持ちがいい。Freddie freeloaderはエバンス抜きのおまけ。
Blue in greenは、ピアノの和音から入る。マイルスのソロもしびれる。意外にも、コルトレーンにまで寂寥感がひしひしと伝わる。asは抜いてシンプルにし、ピアノの和音 vs マイルスのバラードという対比を明確にしている。All bluesは作品中唯一リズムが強調された曲。やはりマイルスとエバンスの掛け合いが焦点になっている。コルトレーンは壮大な表現。そして総括するかのようなエバンスのソロ。これを聴くと、多々聴かれるライブでのこの曲は少々雑である。
Flamenco sketchesは静かなピアノの主題とベースで始まる。静寂なトランぺットの主題。後のソロの世界につながるかのようなコルトレーンのゆったり気を大きくもったバラード。asのソロを経て、まさに曲の主題である、水表面をゆらゆら漂うようなエバンスが出てきて、最後マイルスが短くまとめる