debut
CD2枚組です。まず,2枚目の彼のオリジナル曲を聴いてみてください。
1曲目は12歳のときの作品だということですが,子供とは思えない鋭い感性に驚きます。
どの曲も,晴れた日の川のきらめきのような,
でなければ,虹色の空に光の粒がこぼれるようなイメージです。
高音部が奏でる繊細な旋律と,左手の細かいアルペジオで,
ピアノの音そのものの美しさや,音の並びの美しさを楽しみながら弾いているように思えます。
ただ,個人的な好みかもしれませんが,1枚目の「英雄ポロネーズ」や「愛の夢」なども
同様に音の美しさの追求に徹した演奏のような気がします。
それはそれでひとつの形としてよいのかもしれませんが,
これから年を重ねていくにつれて,勇壮さだとか,切なさといったような感覚も
表現できるようになると,さらにすばらしいのではないかと思いました。
まだ二十歳の若いピアニストです。
ぜひがんばってほしいです。
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番ハ短調&第4番ト単調
20年前に初めて聞いてから惚れ込んでいる思い入れのある録音です。いろいろなピアニストの何十種類というラフマニノフ2番を聞いてきましたが、これ以上のものはありません。芳醇なオーケストラと粒のそろったピアノの音色。バランスのとれた広がりのある音は録音の良さもあるんだと思います。曲、演奏家、録音のすべてが良い名盤!
連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)
「さよならドビュッシー」を読んだ時も思いましたが、読ませる力あるよなあ。
多分粗筋やオチをざっと話すと、「いつかどこかで読んだ話」だと思いますが、もう途中で休みたくなるほどの「これでもかこれでもか」と畳み掛けてくるエピソードの数々、物語の力、流石だ。
表紙の可愛いらしげなカエルと「カエル男」という呑気なネーミングも、流石だ。
デビュー作に近いものらしいですが、どうかこれからもこの熱い濃ゆい「物語を作る力」を保ってくださるように一読者はお願い。小さくまとまった、やっつけ仕事みたいな小説書く作家さんにならないでね…とまで思ってしまいました。
あーやっぱり小説は物語だぜー。これといった山も谷も無い、起承転結もあって無いようなゆるゆる私小説みたいなのばっかり読んでたからか、心からそう思う…。
Rachmaninoff: Symphony No. 2 in E Minor, Op. 27, in Full Score
所属する楽団でラフマニノフの2番を演奏することになり、さっそくスコアを探してみましたが、まわりの団員さんで、数千円かけて分厚いスコアを入手されている方も多数。
しかしこれは、安価でサイズも読みやすいサイズ!!
印刷が若干粗いですが、読むぶんには差し支えはない程度です。
指揮者じゃない限り、このスコアでいいと思います。
かなりおすすめです。
おやすみラフマニノフ (宝島社文庫)
おもしろかったのはおもしろかったんですが……。
他の方もおっしゃっていますが、前作の仕掛け(トリックネタ)のほうがおもしろかったです。
今回はミステリ部分がかなり薄く感じられ。
かといって、音楽青春小説と考えても薄い気がし。
どっちつかずな印象が強いです。
探偵役の岬先生があんまり活躍した印象がないのは私だけでしょうか?
よくよく考えれば、ものすごく出てきて、披露してくださるんですが……なんか薄い気が。
あんまりにも超人過ぎて、設定としてありえない人になってしまっている気がします。
年齢とか考えても……。
司法修習までいっていると考えたら、三十代の設定でよかったんじゃないかなぁ(とすると、ピアニストとしての成長が云々になるのかもですが)
全体としてはおもしろいんですが、いろいろ目につくところが多かったです。