フリーメイソン ‐‐「秘密」を抱えた謎の結社 (角川oneテーマ21)
世間的なフリーメーソンの風説やら、いかがわしさには、とりあえず眉にツバを付けといていいが、荒俣宏の広範な情報力が、世界史の見通しを助けてくれる。日本人で荒俣宏ほど、このフリーメーソン現象(結社、運動など、うまく収まる日本語がない)をバランスよく詳述出来る人物は、ほとんどいないかと。実際、かなり深い問題意識を抱えてたのか、『フリーメーソン』がフリーメーソンたる由縁(啓明的な精神運動を石工のギルドが担うハメになった歴史的経緯、あるいは、当時、ほとんどババ抜きに近い感じだったのかも)過不足なく見事に解明してて、世界的レベルの仕事かもしれない。王権神授説、ピューリタン革命などのイギリス国内の事件(高校大学の社会科、法律政治経済科目で出てくる、実際のニュースバリュー的影響について判断が難しかった箇々の経緯)のモヤモヤした霧が晴れて、スッキリした場所に出れるかと。読後は、これから英米人のフリをするのか、フリーメーソンの精神として抽象的(仏教的)に評価するのか、なかなか難しい宿題が出てはくる。新書版サイズながら読み応え十分。メーソン史家のアルバート・パイクを正当に評価(アメリカが生んだ最も重要な近代フリーメーソン思想家の一人だ)してる点でも、地道な研究の息の長さが見える。
ノロイ プレミアム・エディション [DVD]
予告編を見る限り、なかなか面白そうだったし、わりと怖いという評価を耳にしていたのでどきどきしながら見ました。
感想としては、なかなかいい線いってると思いましたが、もう一つ足りない映画でした。内容がどうのということではなく、
『ブレアウィッチ・プロジェクト』のような描き方で見る者を惹きつけようというのであれば、下手にCGでお化けとか「かぐたば」
の顔を作らないほうがよかったと思います。急にそういった類のものを出されると少し興醒めしてしまいます。
もう一ふん張りで「怖い」映画になったことでしょう。ただ、松本まりかさんの演技にはぐっと来るものがありました。なかなかの名演技でした。
帝都物語 外伝 [DVD]
戦後なお加藤という呪縛に苦しむ者たちの軋轢が産みだす、
眩暈を覚えるほどの猟奇と狂気。
そこで鈴木砂羽の心をどこかに置き忘れてきたような演技力が際立つ。
この作品の世界では<何かがすでに終わっていて>、
そのことをどう理解するかでずいぶん面白味が変わると思う。
思うに、すでに終わっているものとは、
「帝都物語」から「帝都大戦」へと到って喪われた加藤という存在ではないか。
ようするに加藤はすでに存在していない。
にもかかわらず帝都でうごめく夜の住人たち。
加藤以後を生きる人々の素描なのだが、
消失した加藤に対する恐怖感は膨張してひずみはじめ、
連奏を為すように人を殺すことの禁忌が官能で相殺されてゆく。
「登場人物が全員狂っている」とでも言えばよいのか。
当時はひたすらインパクトを受けた作品で、
案外、誰のどのような日常でも、
一皮剥けば似たような願望を潜在的に持っているのではないかと思わせられた。
つまり、妖しいまでの美に耽溺することの否みがたい魅力である。
こういった美しい狂気の結晶は貴重である。
水木サン大全 [DVD]
全編にわたり私は笑顔で見ることができました。なんか面白いんですね。癒し系DVDとでもいうのでしょうか。一つ不満があるのですが、カットされている部分がたくさん有るんですね。どうせならもっと収録してほしかった気もしますが…。お金に余裕のある方、水木しげるに興味のある方ためしにどうでしょうか?
秘密の動物誌 (ちくま学芸文庫)
私は、この本の内容を全く知らずに読み始めて、「ありゃ?ちょっと、待てよ!」と思い込んでしまった。「この本を、私はこよなく愛してきた―茂木健一郎氏、大絶賛!」という腰巻の言葉にまんまとだまされてしまった。光る象、多足蛇、水面直立魚、世界各地には驚くべき未知の動物が生息していた!なんちゃって。「存在する事は写真に写ることである」という信念に貫かれて創造された「稀有な」生き物たち! こんな壮大な時空を隔てた大パロディーが、「学芸文庫」に入っていること自体がパロディーである。