中央モノローグ線 (バンブー・コミックス)
中央線沿線に住む八人の少女が主人公。
はやりの街の擬人化などではない。その街を愛し、その街の特徴にどっぷりと染まり、そんな自分や住人をシニカルに、愛情をもって見つめるさまが、全編モノローグで描かれている。
これはおそらく4コマ漫画における新しい展開だと思う。
たとえばいしいひさいちのように、吉田戦車のように、今後新しく出てくる4コマ作家に影響を与え、亜流をつくり、しかし、いしいひさいちや吉田戦車と同じように、オリジナルにはとうてい手は届かないのだろう。
「モノクローム線」にでてくる少女や女性たちの視線の先にはおもしろおかしな現象はなく、彼らは自分たちが滑稽な存在であり、おかしなことをしているさまを冷静に、ああるいは憐憫を持って、またあるいは笑い飛ばしながら見つめている。
あくまでも自身のおかしさ、変さを自覚しないいしいひさいちのキャラクターや、その変さを周りも受け入れる変な世界を構成する吉田戦車ともまた違う。
どこか私小説でも読んでいる気になる静かな画面は、唇をちょっと横に引いくというシニカルな笑いが似合う。
遠野モノがたり (バンブーコミックス)
4コマでありながらも、イラストエッセイであり、また遠野の内寄りなガイドブック的側面もあり、
何とも味わい深い作品です。
この作品に4コマ漫画としての面白さを見出すかどうかは、そのまま小坂俊史の作風を好きかどうかにかかってくるので、
人によっては退屈なものと感じるやもしれません。
ただ自分は、どこか冷めながらも穏やかな優しさと暖かさを灯ったこの1冊が、心地よくてたまらないです。
最後に、初見で目を奪われる表紙とそのデザインセンスは見事。
前作「中央モノローグ線」に続き、名和田耕平デザイン事務所、素晴らしい仕事です。