銭形平次捕物控〈14〉雛の別れ (嶋中文庫)
嶋中文庫版の第14巻。
「駕籠の行方」「雛の別れ」「井戸の茶碗」「仏師の娘」「火の呪い」「鐘五郎の死」「赤い扱帯」「第廿七吉」「父の遺書」「五つの命」の10編が収められている。
いささか話の詰めの甘いものが目に付いた。事件の奇矯さにこだわり、オチの弱い「井戸の茶碗」など、もう少し工夫できなかったか。
「駕籠の行方」も後半が急ぎ足すぎる。
エッセイ「平次放談」を併録。
あらえびす SP名曲決定盤 第1集
ご存じの方も多いでしょうが、銭形平次の原作者である野村胡堂氏のSPレコードコレクションからの復刻です。歴史資料としての価値はもちろんのこと、蓄音機の時代にこれほどまで水準の高い音楽が享受されていたという音楽性そのものに感動します。胡堂氏は当時のレコード音楽の第一人者であり、東京大学でレコード音楽を講義し、現在の天皇陛下が皇太子であられたときに西洋音楽の御進講も務めた人物です。できれば音の良いスピーカーで再現したいデリケートな音源であります。
銭形平次捕物控〈10〉金色の処女 (嶋中文庫)
嶋中文庫「銭形平次捕物控」シリーズの第10巻。
「百物語」「南蛮仏」「忍術指南」「笑い茸」「許嫁の死」「紅筆願文」「金色の処女」「お篠姉妹」「禁制の賦」「ガラッ八祝言」の10篇が収められている。
このうち「金色の処女」は平次のデビュー作として知られる。1931年に雑誌『オール読物』に出たものだ。ちょっと異様な物語で、スタート地点はこんなのだったか、と興味深く読んだ。
「忍術指南」がストーリーとしては面白かった。
銭形平次捕物控 新装版 (光文社文庫)
1985年に出た光文社時代小説文庫の新装版。字が大きくなっているという。
400篇くらいあるという銭形平次の物語から、10篇を選りすぐって一冊としたもの。収められているのは、「小便組貞女」「八五郎の恋人」「濡れた千両箱」「刑場の花嫁」「仏喜三郎」「雪の夜」「花見の仇討」「弱い浪人」「遺書の罪」「尼が紅」。
傑作選ということで、銭形平次への入門編としては良いと思う。本格的に、全編を読破しようと意気込んでいる人には不要の一冊。
私は、銭形平次ものを読むのは初めてであった。驚いたのは、平次がほとんど銭を投げないこと。本書では、わずか1篇でしか、銭を投げつける見せ場が出てこないのである。恐るべしはテレビの影響である。
もうひとつの特徴は、ものすごく人情味が強いということ。止むに止まれぬ事情からの犯罪が多く、犯人はほとんどが見逃されてしまう。平次の検挙率は、かなり低いのではないかと思わされた。
全体的な感想としては、いまひとつの印象が強い。捕物帳の傑作とは聞くが、うーむ。