シンガー・ソングライターからの贈り物 荒井由実作品集「いちご白書」をもう一度/卒業写真
ユーミンが、荒井由実時代に、作詞・作曲とも手掛けたさまざまなアーティストへの提供曲から、ヒット曲や埋もれていた名曲をオリジナル音源(1972年~1977年)で収録し、さらに廃盤となった音源も6曲収録したものです。
名曲『グッド・ラック・アンド・グッドバイ』は最初、岡崎友紀のシングルで発売されていたのです。岡崎友紀の全盛期の頃で、実はこちらがオリジナルだったのですね。知りませんでした。ステキなアレンジで雰囲気がよく、おまけにユーミンの方には入ってない「セリフ」まであったりして、とても良かったです。ところで、若い世代の方、「岡崎友紀」ってご存知でした?
もっと驚いたことは、ユーミンのデビューアルバムタイトルにもなった『ひこうき雲』は、最初、あの雪村いづみに提供されたものでした。結局お蔵入りになって、前述のアルバム『ひこうき雲』に収録されました。「雪村いづみ」独特の崩した歌い方が、ユーミンのモノとは別の音楽に聞こえます。ユーミンが17歳の時の作品でした。
ハイ・ファイ・セットで大ヒットした『冷たい雨』は、最初、バンバンが歌った『「いちご白書」をもう一度』のB面だったのですね。
どれもが知らないエピソードのオンバレードです。
アグネス・チャンや、太田裕美、松島トモ子!にも楽曲を提供していたのをこのCDで知りました。どれもやはり「ユーミンサウンド」が溢れていました。
「ユーミン・サウンド」ファンにとっては、お宝CDといえましょう。
いちご同盟 (集英社文庫)
憑かれたように、自殺を夢想する15歳のぼく。無理解な両親や進学に悩む彼が出会ったのは、難病の少女であった。
死ぬ方法ばかり夢想して過ごした中学時代(この時期のひとは、死を甘美なものと思い込みやすい)とか「世界中で一番きらいな人間は、ママだ、とぼくは思った。」などのセリフに非常にシンパシーを感じた。敏感で純粋な子供時代、世の中は生きていくにはあまりに汚くて、美しい死に憧れる。しかし、齢を重ねるにつれ、目は曇り盲いて、肺腑は煤け、濁った空気を鈍感に泳いでいけるようになるものだ。主人公が、少女との邂逅により自分の中に潜む甘えを恥じるというのは、陳腐かもしれないがリアル。人の考えは些細なことであっけなく変わるもの。