バルト三国史
「森の兄弟」と言ふ言葉を御存知だろうか?「森の兄弟」とは、第二次世界大戦後のバルト三国で、ドイツが残して行った武器を使って、ソ連に対して武装闘争を続けた人々の事である。(本書125〜126ページ参照)第二次世界大戦が終はってからも、バルト三国では、この様な激しい武装闘争が、10年近くも続いて居た事を、私は、この本を読むまで知らなかった。又、1960年代、70年代、そして80年代に入ってからも、バルト三国において、この本に述べられて居る程の反ソ活動が続いて居た事も、そうしたバルト三国でのソ連への抵抗運動の背後にカトリック教会が居た事も、私は、この本を読むまで、正しく認識して居なかった。
更に、1970年代から1980年代に掛けてのバルト三国の情勢が、ソ連崩壊の過程にこれほど大きな役割を演じて居た事も、この本を読むまで、私は、正しく認識して居なかった。バルト三国の現代史は悲惨である。−−第一次世界大戦後の短い独立の時代の後、バルト三国の人々は、ソ連によって占領され、虐殺され、シベリアへの強制移住によって家族が離散させられた。−−だが、バルト三国の人々は、その歴史に対して、決して受身だった訳ではない。それどころか、バルト三国の人々こそは、ソ連に対して、最も勇敢に抵抗し、ソ連を崩壊に追ひ込んだ主役であった事を、私達日本人は認識するべきである。−−バルト三国は、20世紀の世界史の中心舞台だったのである。−−本書を若い人々に推薦する。
(西岡昌紀・内科医/湾岸戦争開戦から17年目の日に)
物語 バルト三国の歴史―エストニア・ラトヴィア・リトアニア (中公新書)
出張でこの地域に行くことになったので、勉強のために本書を手にとった。バルト三国はまだまだ日本人にとって馴染みがない地域で、関連する書籍が極めて少ない中、本書はハンディな新書であり、大変重宝した。中身としても、バルト三国がたどってきた紆余曲折の歴史、地理、そしてソ連からの独立以降の新しい政治的な展開などももれなくカバーされており、取り敢えず本書を読めばこの地域についての必要最低限の知識は身に付くようになっている。
とは言え、本書は新書とは言え決して読みやすい本ではないし、面白みにも欠けている。著者はこの地域を専門に研究している学者なのだが、学者であるがためか、新書にしてはあまりにも堅い文体となっているほか、歴史的な事実や歴史的な人名についてもかなり多くを周知のものとして描いている箇所が多いのが気になった。特に人名については日本ではほぼ全く知られていないので、顔写真なり肖像画を使うなどして、より読者に効果的にインプットできるような工夫が必要だったのではないか。
地球の歩き方 ガイドブック A30 バルトの国々
内容としてまとまってはいるが情報が極端に少ないように感じた。実際に3国分なのにほかのガイドブックの1国分の数分の一の厚さである。
特にエストニアの旧市街については記述すべきことがまだまだあるように思えるが、日本語のガイドブックとしてはほかに同様のものがないので、事前に参照する価値はあるだろう。写真もきれいだと思う。
実際に観光中に私が用いたのは、現地の両替所でもらった無料の地図と無料のガイドブック(いづれも英語、ロシア語、フィンランド語、現地語などあり。日本語はない)で、このガイドブックを上回っている。ただし現地でしか入手できず、配布場所も限られているので探すのに苦労する。この地域では人によっては英語も通じるが、ロシア語が広く通じる。
あと、事前に参照するためとするなら、渡航ルートについての記述が足りない。ヨーロッパ各都市からバルト三国の首都へフライトはあるが、そのほかにもフィンランド、スェーデンからフェリーで上陸することができ、特にヘルシンキ(フィンランド)からタリン(エストニア)へのルートは経済的で、時間も片道一時間半なので現地では有名である。私はこれをフィンランドで教えてもらったが、日本のガイドブックからはわからないので詳細を調べていくとよい。
バルト三国歴史紀行〈2〉ラトヴィア
「・・・歴史紀行」というタイトルなので歴史の本だと思っていたが。それぞれの国を作者自身が旅をし、名所や旧跡をそれぞれの歴史的背景を交えて書いているので大変面白く読めた。最近天皇皇后両陛下が訪問された国々であるが、我々日本人には遠い国であるバルト三国を紹介している興味深い本であった。
るるぶバルト三国 (るるぶ情報版海外)
バルト三国のエストニア、ラトヴィア、リトアニアが1991年「人間の鎖」によって独立を果たして以来、いずれの日にかここを訪れたいと願っています。特に何年に1回開催される有名な合唱祭(歌謡祭)の頃が理想ですが。
るるぶシリーズにバルト三国があったのかどうかは知りませんでしたが、書店でこれを見た時はとても嬉しかったですね。
24ページ以降にはタリン旧市街を歩くとして800年の歴史を感じさせる建造物が掲載してありました。その国の観光名所だけでなく、成り立ちや言語、民族などにも触れていますし、知られざる一面も紹介しています。
45ページには、ハンザ都市の栄光を宿すバルト最大の街としてラトヴィアの「バルトの貴婦人」リガの紹介があります。特にユーゲントシュンティール建築群散歩は読みごたえがありました。アール・ヌーヴォーの建築物としてはこれだけ固まって存在している都市は珍しいでしょう。
リトアニアのヴィリニュスには杉浦モニュメントがあります。1940年リトアニアの在カウナス日本領事館領事代理だった杉原千畝氏が自分の身の危険もかえりみず、ポーランドからやってきた6000人ものユダヤ難民の国外脱出を助けるためにビザを発給しました。カウナスにある杉原記念館と併せて訪れたいと思っています。
82ページには有名な十字架の丘が紹介してありますソ連軍の圧政を跳ね返し、繰り返し作り続けてきた十字架の丘の写真からは人々の痛切な思いと深い信仰心が伝わってくるようでした。
勿論、ホテル、お土産、レストランの情報は当然掲載してありますし、入国と出国に必要な情報もまとめて掲載してありました。