農家が教える加工・保存・貯蔵の知恵―野菜・山菜・果物を長く楽しむ
100年以上東京の練馬区で野菜を作り、土壌を培ってきた農家。そこの農家が指導する体験農園に参加しています。土が良くて、野菜が、一時期にドカッと取れます。これを、腐らさず、枯らさず、美味しい内に、無駄なく食べ切る。これが難しい。生野菜の保存・加工法を探して、本書に出会いました。
本書は、料理研究家などが、購入した野菜で作る保存加工料理のレシピ、ファッション誌風の料理マニュアル本ではありません。自分で畑を耕し野菜を作っている農家が、取れ過ぎる野菜や、規格外の野菜、あるいは山菜や自家製の果物を、有効利用。野菜や果物の取れない季節にも、それらを食べられるように、加工し保存し貯蔵してきた伝統的なやり方の紹介です。南北に長い日本では特産野菜は、地方ごとに種類も違い、取れる時期も違います。地方ごとの気候も独特です。それらを踏まえず、抽象的な日本の中で、どこででも出来る方法が述べられていることが、類書では多いようです。その点、本書では、各地方に伝承された実践法が、紹介されています。自分の居住地と照らし合わせて、それができるかどうか、判断できるので、大変実践的です。
居住地によっては無理な方法もありますが、寒冷地での貯蔵法など、郷土文化史的な目で見ても楽しい。また緑の葉物を粉にする方法、山菜の塩蔵と戻し方、ビン詰めの方法など、話には聞くが、一寸手が出せなかった一般的な貯蔵・加工技術が詳述されていて実用的です。最後に保存や貯蔵を学術的に捉えた過去の研究論文を幾つか紹介した章があり、生ま物の鮮度を保つ保存工程の不思議な理屈を知ることができます。 農業啓蒙の月刊誌「現代農業」の別冊として3年前に出版されたものを単行本にしたものですが、内容は新鮮です。