イティハーサ (6) (ハヤカワ文庫 JA (649))
この巻ではますます物語は進展する。不二の里に入った鷹野は空子都という真魔那と出会う。不二の里での人々の暮らしも描かれる。また、青比古たちはついに桂たちと再会。しかし…。透こは鬼幽の命で不二の里に潜入を試みるが、その麓の森では…。そして、鬼幽が何を知りたがっているのかも、鬼幽自身の口から透こに語られる。
この巻はいろいろなストーリーが同時進行しているので、7巻の次に好きな巻。
空子都の理想はわかるが、個人的な感情もかなり優先していて、そのやり口は私にはやはり汚いと感じられる。空子都の過去を考えると気の毒だし、理解してあげたいとも思うのだが、イティハーサの中では珍しく好きになれないキャラクター。
イティハーサ (1) (ハヤカワ文庫 JA (639))
時は古代の日本。ある日、姿無き神々がある鳥居を 抜けて人々を見捨てて旅立ってしまった。途方に暮れる 残された人々、姿有る神々亜神。その神々の行方を 追い始める不思議な力を持つ少女とうこ(漢字忘れました)、その少女を兄として育てた鷹野、二人を見守る 青比古。壮大な神と人との物語が始まります。
イティハーサ (5) (ハヤカワ文庫 JA (646))
亞神の首領である天音(あまね)が登場し、タカヤを不二へといざないます。タカヤは不二の里に到達します。天音を求めねば(信仰せねば)超えられない幻夢の森を天音を求めることなく超えて。天音はそんなタカヤに一抹の不安を覚えますが、タカヤの力に頼らざるを得ない。天音の冠は鬼幽の冠と同じデザインというのも意味深です。
桃源郷を統べる天音は「人が求めるべき理想の神」ですが、本人はそれ以外のあり方など思いもよらないような単純なところもあります。ひたすら善意を提供する過保護者として君臨する神です。天音の力の源が不二の里の人々の一心の祈りという「支持票」というのも意味深です。それに比べると、威神の首魁である鬼幽や不二の里から飛び出して己探しを続ける亞神の律尊は、惑う神・複雑な神・孤立した神です。
律尊から一切の判断を任されたタカヤは、不二の里のあり方を認めつつも自らを委ねられない「個人」として惑います。
悪とはいえ生きる活力を与えてくれる威神、盲目的支持が必要だが平穏を与えてくれる亞神、それらから離れた異邦的なヤチ王を前にしてタカヤたちがどういう結論に至るのか・・・という非常に複雑な物語です。
イティハーサ (2) (ハヤカワ文庫 JA (641))
目に見えぬ神の秘密に近づくため、青比古と桂は神鏡のある里へ旅立ちます。その間に、タカヤたちは鬼幽たちの一派に襲われ、トオコは双子のヨウコと出会って殺され、一狼太(那智)は鬼幽(威神)のしもべとしてとらわれ、タカヤは深手を負います。桂の死んだ弟はヤチ王として蘇ります。生きている側のヨウコは、トオコの魂をもつトオコとなります。ストーリーがさらにややこしくなります。伏線だらけの第2巻ですが、鬼幽の一派が青比古たちを追ってくる・・・というサスペンスが大きな軸になっています。急転はしているものの、それを消化する間もなく続きが読みたくなるようなスピーディーな巻です。