ニコライ二世とアレクサンドラ皇后―ロシア最後の皇帝一家の悲劇
私にとって、ロマノフ王朝は興味の対象外だった。
ベルサイユのばらで、ブルボン王朝断絶については日本人には親しみというか基礎知識があるが、隣国でもあり、100年前に戦い、ニコライ2世が皇太子時代来日して大津事件に遭遇したことも基礎知識としてはあったが、ブルボン王朝末期に比べ知っていることはほとんどなかった。
この本を手に取ったきっかけはルイ17世のDNA鑑定に関する書籍を読了後、同じく「偽物」が現れた皇女アナスタシアの書籍を読み、その「物語らしさの強調」に辟易とした時だった。「怪僧」や「皇女」等、劇的に書かれているものは、その世界に憧れ、劇的な世界にのめりこませてくれるかもしれない。
だが、この本は違う。欧州の王族、その婚姻関係、それによる血友病の遺伝と、血友病の皇太子を持つ皇后の苦悩、欧州を巻きこむ大戦への皇帝の苦悩。
他の欧州王室、皇室関係者、政府関係者、大使の報告等の書簡・日記を交えて記されている。(当時の人間の文章表現力の現代人に勝る事と言ったら!)
ルイ16世も、ニコライ2世も激動の時代でなければ、温和な支配者として歴史に埋もれていたかもしれない。その王朝の最も温和であろう支配者が、血まみれで殺害されるなど、劇的と言うより皮肉としか思えない。
惜しむべきは「ロシア」時代の欧州地図を掲載しておいてくれていたら一助になったと思うが、それを差し引いても、この本は良書だと思う。
また余談だが、この時代の欧州や、断絶する王家を見、知ることで、改めて日本と言う国の特異性、皇室の存在について考えるところもあった。
ウィリアムズ血液学マニュアル
もともと血液志望でしたので、初期研修医のときに買いました。
その時は「難しいしよく分からないな。」といった印象で、そのまま本棚の隅に眠っていました。
その後血液の道に入り、様々な難問にぶちあたったとき、エビデンスのみを羅列する本ではなく、具体的なマニュアル本のようなものが欲しいと思い藁にもすがる思いでこの本をとりました・・・。
あまりの素晴らしさに驚きました。わたくしは血液学は初心者ですが、この本はかゆいところまで実によく書かれていると思います。まあ、あのWilliamsからなので当然なのでしょうが。
かつ、英語の苦手な私でも読める日本語版なので、同じく英語の苦手な方にもとっつきやすいのではと思います。おすすめです。
血液病レジデントマニュアル
レジデントだけにはもったいない感じ。
外来のお伴にもちょっといいかも。
小さいし、分類や診断基準がしっかり載ってるし。
一人の人が書いてあるためか、
記載のダブりや、相反がなくて、
整合性がとれている。
血液腫瘍、、が主体で、
血栓止血や溶血は、やや控えめな感じ。
図解 白血病・悪性リンパ腫がわかる本―ここまで進んだ最新治療
患者の家族です。悪性リンパ腫の告知を受けてあわてふためいて購入しました。きれいで読みやすい本です。新しい本で、最新情報が多く、治療の側で助けてくれました。患者がベッドの上で読んでいる時、ドクターが見せてと手に取り、本をご覧になったそうですが、これと一緒にあったもう一冊「心配しなくていいですよ。再発・転移悪性リンパ腫」の2冊で、「全部読めば、専門医になれる。」と、励ましてもらったそうです。また、ドクター看護師双方から、勉強している人は治療しやすい、免疫低下中の自己管理もうまくいきやすい、ということでいっしょに本を見て、説明していただいたりしたそうです。(そちらのレビューにも書かせてもらいました。)
白血病についても書かれていますので、悪性リンパ腫に関しては、半分のボリュームですが、それでもたくさんの図解で、病気と治療の理解の助けとなりました。
安部英医師「薬害エイズ」事件の真実
本書を読むまで恥ずかしながら、“薬害エイズ事件”について新聞・テレビが報じていた安部医師の責任問題に何も疑問を抱いていなかった。
しかし、本書を読んで安部医師はマスコミによって悪者にされた悲しい人物であったことを知り、怒りを覚えた。
毎日新聞、櫻井よしこ氏などが主張していた、
「安部医師がミドリ十字から金銭を受け取った、治験を遅らせる便宜を図った」
という事実は1つも存在しなかったのである。
特に櫻井よしこ氏が安部医師のインタビューを捏造し自分の主張を正当化していたという事実は、強く非難されるべきであろう。
さらには、検察が当時の最先端のHIV学者であるギャロ博士やシヌシ博士(2008年ノーベル生理・医学賞受賞)などに嘱託尋問を行ったが、
証言内容が安部医師に有利であったため、証言をなかったものにしてしまったという事実にも呆れてしまった。
安部医師がクリオ製剤研究のために自分の血液を使い、重症貧血で倒れたという話には感動した。
安部医師は血友病患者のため、文字通りクリオ製剤の研究に心血を注いでいたのである。
さらに「日本血友病友の会」設立や財団化の資金集めにも尽力し、安部医師が人間としても素晴らしい人物であったことがよくわかった。
残念ながら安部医師は既に亡くなられているが、是非本書がたくさんの人たちに読まれて安部医師の名誉が回復されることを強く願っている。