あの黒いねこにきいて (マーガレットコミックス)
あきの香奈さんの作品なら
どれにレビューしてもよいのだけれど。
どれもお薦めしたい、というのとはちょっと違うかもしれない。
あなたがどんな人かも知らず薦める作品ではないのかもしれない。
なぜなら、
あきの香奈さんの作品が好きな人には
悪いヒトはいないと思うから。ひょっとしたら人を選ぶのかもしれない。
そこを見つめていたいという、見落とされた日常の大切だったはずの場面を
私たちに思い出させ、再現してくれる。
こんな素晴らしい作品が描けるのは、すごく残念だけど、
今までで彼女しかいない。
メープルシュガー (マーガレットコミックス)
もし、この国が、マンガというものを真剣に文化だと考え、
世界に、そして後世に伝えたいとするならば、
絶対に失ってはならないものがある。
それは、あきの香奈さんの作品群だ。
彼女が残したものを、手の届くところに。
それが出来たなら、私は漫画文化を誇るし、
何の脚色もなく、おそらくずっと世界は素晴らしいものになる。
正直、彼女が画かなくなったことをどれほど悔やんでいることか。
まだ再開をあきらめてはいないけれど、
少なくともこの失った十数年を憂う。
表題作も含め、収録すべての作品が実に、素敵だ。
わけても「川へ行こう」は、ジャンルを超え、実験を超え、おふざけを超え、
完全に孤高の頂に上る傑作だ。
全ての漫画は、あきの香奈の足元にも及ばない。つらいことだが。