或る夜の出来事 [VHS]
合唱、早朝の食事、渡河、ヒッチハイク、深夜の告白、すれ違い、39ドルの小切手、結婚式、走り出す花嫁、お膳立ては完璧に揃っているのに肝心要の部分(例:飲んだくれている彼氏の元に登場する彼女)が省略されているとはどーいう了見なのだ。
「喇叭が鳴り響きジェリコの壁が崩れましたよ、うわわーい」なんて艶笑エンドで喜べるかっつーの。
或る夜の出来事 [VHS]
富豪の一人娘エリーは、恋人と勝手に婚約を交わしたことで父親と大ゲンカ。その勢いで乗っていた豪華船から脱走し、ニューヨーク行きのバスに乗り込んだ。そのバスで失業中の新聞記者ピーターと知り合ったエリーは、ひょんなことから彼と2人でニューヨークを目指すことに。・・・
勝気でわがままな令嬢と、ちょっぴり皮肉屋だけどスマートで包容力のある新聞記者との出会い。最初は反目しあっていた2人が、一緒に旅を続ける中でだんだん惹かれあっていく展開は実に微笑ましい限りです。この作品はまさしく「元祖ラブコメ」的存在で、カップルのコミカルなやり取りは現在にも引き継がれているわけですが、この作品には簡単に真似させないポイントがあるように思います。それは「粋」だということ。令嬢が思わぬ特技?を披露するヒッチハイクや「ジェリコの壁」など、色気を感じさせる場面の表現が実に洒落ていて上手いんです。
個人的には、エリーの性格が最後まで変わらずじまいだったというのが気になりますが、裏を返せばエリーに真実の愛を気づかせてくれたのが、意外な人物だったというのもこの物語のいい所かも。1934年の作品でありながら全く古さを感じさせない、お洒落で粋なラブコメディーです。
或る夜の出来事 [DVD]
おもしろい場面もいろいろあった。たとえば、ピーターがヒッチハイクで車を止める方法を試すのだがうまくいかないとか、エリーが脚をみせて一発で成功するとか。車に乗せてくれた男の歌もよかった。それが実は泥棒だったなんて、おもしろい工夫だった。
フランク・キャプラらしい好感度の高い作品だ。しかし、作品の評価としては平均点ではないか。残念ながらドタバタが過ぎたようだ。ストーリーは見ればすぐにわかる。途中でいろいろあっても最後は落ち着くところに落ち着く。しかし、エリーとキングの結婚式まで話を引っ張っていくとは思わなかった。もうすこしスッキリさせれば上々のコメディになっていたと思う。