子ども観の近代―『赤い鳥』と「童心」の理想 (中公新書)
新書として、長さと内容のバランスがよい本だ。表題のテーマに関して短時間で学習的満足感を味わえる。1998年2月に初版が出て、2007年11月に再販。関心のある向きにコンスタントに読まれているのだろう。主に、近代日本における「子ども」イメージの形成を、児童文学の変遷、特に鈴木三重吉の創刊した『赤い鳥』にみられる子どもの描かれ方に注目して論じられる。明治期の巌谷小波に代表される「お伽噺」のように、とにかく「子ども向け」の物語を一括して提供していた時代から変わって、大正7年に誕生した『赤い鳥』はより明確に独自の「子ども」像を提示していた。それは、純粋でか弱い良い子、という理念的な「子ども」像であった。後に『少年倶楽部』のような元気で勇猛な「子ども」像(やがてお国の為に戦う)の前で影が薄くなるにせよ、この『赤い鳥』が物語った「子ども」の姿は近代日本の幼年者をめぐる「知」としては大きな影響力をもった。そこにこめられた「童心」の理想化の背後には、ますます近代化する社会のなかで世俗の荒波からの逃避場を求める大人たちの心情があったと、というのが著者の結論的な主張である。なるほど、とその簡にして要をえた論述にはひっかかるところなく得心した。近代日本の「子ども」をめぐる研究書としてまず手にとってほしい一冊。
シャルトル公爵の愉しみ (1) (小学館文庫)
新刊が出たのを知り早速ネットで購入。
中を見てみると… がっくり。間違った!
『新作』ではありませんでした。
題名が『シャルトル公爵の愉しみ』なので間違って買ってしまいましたが、
プチフラワーコミックスのシャルトルシリーズの「文庫化」です。
収録作品はフラワーコミックスの『愛はジゴロの愉しみ』から、純愛はジゴロの愉しみ、純金は黒猫の愉しみ、純毛は生娘の愉しみ、霧のライオン、アレキサンドライト・アイ
『アポローンは嫉妬する』から、アポローンは嫉妬する、デュオニューソスは泥酔する
の合計7作品です。
違う表紙の本も是非欲しいという方にはお薦めです。
巻末のエッセイは島村匠さんです。
或る夜の出来事 [DVD]
ラブコメディだが、今の米作品に比べ、ほのぼのした、雰囲気があり、粋な人もいる。古き良き、アメリカとその時代に生きる人々と言うところだ。 バス内で、興がのり、皆知らぬどうしで唄を歌いだしたり、踊ったり、またヒッチハイクのシーンは今でも語り草だ。ゲーブル演じる記者ピーターが、自慢気に車を止められると言い、結果はことごとく失敗するシーンは、何度観ても爆笑だ。またピーターが、スクランブルエッグを作るシーン、コルベール演じる、アンドリュース嬢が、シャワーを済ませ、歩いて来た姿を確認してから、卵を割る、温かいのを出そうとの配慮なのかその細やかさが素晴らしく、愛しい。食事シーンでの、ドーナツの浸しかたのレクチャーをする、ピーター。 一つの卵を二人で分け食べる。今の米映画では少なくなったシーンと言える。頑固で調子が良く、いつもお金にピーピーしているが、バイタリティやユーモアがあり、女性には強引で、やや乱暴な態度もするが、そんな裏で、気遣いを見せる、ピーターは、もう完璧!な設定と言える。 この映画は、ひとつひとつのシーンが全て輝いている。 ゲーブルは、コメディは出演は少ないが、素晴らしいコメディセンスだったと思う。 もっとコメディに出演するべきだったと思う。作品は、演出もユーモア、ウィットに富み、温かい。ラストで男女が晴れて夫婦になったシーンも直接キスする、抱きしめるなどの芝居で見せず、お互いを仕切っていた毛布を、とる事で表現した。最初から最後まで、ひとつにつながっている作品だ。 この上質なラブコメディに匹敵する作品は未だにないと言っても過言ではないだろう。