にっぽん玉砕道-「子供が主役」で甲子園に10回も行けるかっ! -
最初、新聞広告の表紙の写真を見た時、野々村氏のやくざにしか見えない容貌とファッションに抵抗を感じ、読んでみようという気にならなかった。久しく高校野球を見ていなかったので、野々村氏のことは全く知らなかったし…。が、半月後の広告では、「テレビ、各紙誌で話題!」「感動!のお葉書続々到着!」の言葉が並び、他のレビュアーの評も読んで、思い切って買ってみた。抵抗なくスラスラ読め、この二人の虜になった。
印象的な場面はたくさんある。マスコミのバッシングによって、監督を辞任させられた時、コーチや生徒達は号泣し、約8000人の監督復帰嘆願の署名が集まり、「野々村監督の下で野球をしたい」という生徒の思いに応えるため、一年後に復帰。その一年後に定年退職を迎えた時、「野々村を監督に残してくれ」との11,000人の署名が集まる。「規則は守らなければならない」という野々村氏に、「無駄でもやるだけはやります。そうしないと悔いが残ります」と言った保護者代表の言葉は感動的だった。
また30代の頃、列車の中でタバコを吸っていた他校の生徒を殴って説教したことがあった。すると、それまでおっさん呼ばわりしていた他校の生徒が「先生」と言ってきた。
勝谷「ここで重要なのは、この子供達が監督を舐めていないということ。大人として教師として監督を信頼しているということです。監督の『覚悟』を子供達は敏感に感じ取ったのだと思います。」
野々村氏は全校集会で生徒達にこう言う。「お前らには人権はないんだ。俺はそんなもの、絶対に認めないよ。でも、人格さえできれば、人権を認める。今、お前達は人格を作るためにも学校に通っているのだ」
卒業式の前日に髪の長い男子生徒に「髪を切れ」と言ったところ、生徒は翌日そのままで登校し「散髪屋が休みだった」と言う。そこで、長ばさみを持ってきて切ったという。生徒達は諦めて素直に従ったのに、周りの先生は「訴えられる」と青ざめたという。今、これだけ筋を通せる教師がどれだけいるだろう。
また、勝谷氏と野々村氏は、ルールブックに「勝つことを目的とする」と書いてあるのに、21世紀枠といったオンリーワン的なものを持ち込む高校野球の矛盾を批判している。「ナンバーワンになりたくて頑張って、結果的にオンリーワンになっていくのが甲子園なのです。でも最初からオンリーワンでいいんだと、この花もこの花もいいねと見とれてしまったら、見られる側は努力なんてしない。生まれたままの姿を認めろと言ってそれで終わりです。でもナンバーワンを目指していれば、そうなれなくても、その後に何かが残りますね」。
勝谷氏と野々村氏は、非常に気が合っている。考え方が一致するする人は、引き合うのだろう。
お前ならできる―甲子園を制した名将による「やる気」を引き出す人間育成術
人間小倉監督の人柄がよく表れていて面白い。
厳しさとやさしさを合わせ持った魅力な人物である。
だから選手たちに父親のように慕われるのだろう。
この監督の下で野球ができる日大三高の選手たちは幸せだ。