言うまでもなく、たとえば、相手と飛躍的に一体化を遂げようとする倉木麻衣の詞の世界とちがって、宇多田ヒカルの詞は、どんな幸福なときでも、相手との距離感、不安、相手と一体化できない自我の部分にこだわる。同様に、U2の上記の曲も、「君がいてもいなくても生きていけない」と、どうしたって円満には収まらない距離を抱えて相手を愛している状態を歌ったものだ。ともに、夢見がちな若い子には興ざめな詞の世界だ。だから、MCで語っていたように宇多田の父がU2のファンらしいということを超えて、宇多田ヒカルが、自分の詞の世界観を学んだ師匠のひとりが、U2のボノなのではないか、という気がした。ちなみに、U2も宇多田も非アフロ-アメリカンでありながらに接近したという作曲上の共通点も存在する。
もちろん、U2の上記の曲は、キムタク、ミポリン主演のテレビドラマ『眠れる森』の挿入曲に使われたものだった。そして、彼女がCD「Wait&See」でカヴァーしたジャズのスタンダード・ナンバー「Fly Me To the Moon」は、『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディング・テーマだった。だから、ひょっとすると、宇多田も、アフロ-アフリカンの音楽以外の一部の洋楽については、アニメやドラマに対する卑俗な関心を出発点にして学び始めたのかもしれない。けれども、原曲の入手ルートについての真相はいずれにしろ、それを創造的な芸術活動にまで高めているところがすごい。
アススメなのが
7.脱走→(アスランがシンを説得しようとしている時の曲)
14.勇気の滑空→(キラが宇宙にいるラクスを助けに行くときの曲)
24.哀しみのステラ→(ステラ水葬の時の曲)
28.旅立ちの朝→(AAの発進の時の曲)
30.風の鼓動→(よく使われるかわいい曲。アスランがよく頭を抱えさせられる時に流れる曲。ミーアがベッドに忍び込んでいた時など。)
34.父の影→(暁を見せられたときの曲。AA発進前にも使用された曲)
36.再会の勇気→(次回予告によく使用される曲)
臨場感あふれる曲から、スローテンポの曲まで様々です。
よく聴く曲ばかりなので、聴いただけで本編が思い出されます。
ぜひ、一度と言わず何度でも聴いてほしい一枚です!
ファンなら絶対買いの一枚!!!