核の砂漠とシルクロード観光のリスク─NHKが放送しなかった楼蘭遺跡周辺の不都合な真実 (高田純の放射線防護学入門シリーズ)
著者である札幌医科大学高田教授の前著「中国の核実験」で、著者のカザフスタンでの調査から、中共がウイグル人の居住地で46回もの核実験を行い、それは広島核の1375発分にもなる。そして19万人が死亡、129万人ものウイグル人が核放射線被害を受けたと伝えていた。
続編である本著では、NHKが中国の核実験を承知した上で、それを隠したまま、歴史ロマンだけに光を当てたシルクロードの番組を制作したという驚愕の事実をを告発している。
それは、「中国の核実験」を著者自身が、井上靖記念館を訪れた際、関係資料から知ったという。
この番組により、27万人の日本人が、シルクロードを観光に誘ったのだ。
そして、中共は、1969年の核実験で、同胞である5万人の人民解放軍兵士を参加させた核軍事演習を行っていた!
彼らは何も知らされず、放射線防護装備など全くなく、核実験に突撃したのである…当に悪魔の所業である。
中共寄りの番組を制作し、告訴されているNHKと中共の関係=不都合な真実を放射線防護学の研究者という立場から解き明かした著者の渾身の一冊であった。
楼蘭 (新潮文庫)
主に西域を舞台とした短編集。
(後半の数作は本邦が舞台)
井上靖氏の作品には読者に「無常感」を抱かせるものが多いですが、
タイトル作の「楼蘭」はまさにそれが凝縮された佳作と言って良いでしょう。
西域の動乱に翻弄され続け、数奇な運命を辿った末に滅んでゆく楼蘭。
この小説には主人公らしい主人公はおらず「楼蘭」の名が忽然と文献に登場してから、
滅んでゆくまでの風景を淡々と綴っています。
満々の水をたたえていたロブノールは夢のように去り、かつてのオアシス都市楼蘭は、
やがて砂塵にその残骸をさらすのみとなりました。
悠久の時を経て、その砂の中から一体の美しい女性のミイラが発見されたのは20世紀になってのことでした。
井上氏は、彼女を楼蘭の皇女であったと位置づけます。
それを事実とする科学的な証拠は何一つありませんが、井上氏にとって彼女は「運命の無常」を象徴する存在であったに違いありません。
そしてそれは淡い詩情をかきたてるものであったでしょう。
それは、しろばんばにおける「さき子」であり、武田信玄における「由布姫」であり、
氏の作品に数多く登場する象徴的な女性たちの存在と重なります。
楼蘭以外の作品でも、氏は西域を舞台として自由な想像をめぐらせています。
古い説話をモチーフにしたものもあり、また井上氏自身の完全な創作であるものもあります。
多くの民族と歴史が交錯した西域は、まさに氏の作品における絶好の舞台だったのでしょう。
講談社版 新シルクロード 歴史と人物〈第13巻〉楼蘭 さまよえる探検家たち―ヘディン、スタイン、よみがえる古代王国 (講談社DVD BOOK)
NHKでは小河墓なるお墓の発掘ドキュメントだったけど、この本は、楼蘭に魅せられ探検した人々のドラマを描いている。読んでようやくNHKが放送した内容のすごさがわかった。
そもそも、小河墓って全然知らなかったし。
1900年代の頭にこの地域を冒険したヘディンの記録映像がたっぷり入っているのはびっくりした。あの時代、いったいどうやって探検したのかが、リアルに伝わってくる。