袋小路の男 (講談社文庫)
こんなスマートに生きてるやつがいるのかよ現実世界に。けどいるんでしょうきっと。容姿はオダジョーを想像してしまうボクはかなり安易でしょう。
誰かも書いてましたがとにかく「アーリオ オーリオ」が傑作。泣きそうになったじゃないか。あぶねー。
見えないものを見ようとするふたり。それでも、ふたりの心が通うのはひとときなんだろう。
すれ違ってもう二度と出会わない、というのが自分の宇宙観。
あーちなみに、自分はどんな文学賞もたいしたものだとは思わないし、期待もしない。セックスがあるかないかは自分にとっては大きなことだけど、そこが「純愛」に関係するとは思えない。てか純愛ってなんですかそりゃ。時代に対する批判なんて、なくていい。いやおうなく時代を映していればそれでいい。
ばかもの [DVD]
原作を読んだ時は、いいと思ったのだが、そのうちわからなくなった。映画を観たらなお分からない。木に縛りつけて…という部分が、ある必然性をもって描かれているのではなくて、ただ恐ろしい行為を描きたくて描いたようにしか思えないからである。
あと前半の、妙に簡単にセックスできてしまう主人公というのが、感情移入できない。雰囲気も分からない。そう簡単にまとめるなと言われるだろうが、「ああDQNの世界ってこうなんだろうな」というのが、たどりつく結論である。 しかし純文学の映画化にしては、美男美女ばかり出てくるのは、違和感がでかい。すまん。
やわらかい生活 スペシャル・エディション [DVD]
躁鬱病の30代女と4人の男の都会での生活を淡々と描いている。
4人の男は30女の心の支えとなっているようだが、男の方も皆どこか壊れて
しまっていて決して幸せではない。みんな心の傷を抱えながら生活している。
こんな状況は現実の世界でも珍しくはないだろう。
「やわらかい生活」は長続きしない。男の内2人は不幸な結末によって目の前
から消え残り2人は「まっとう」な世界に帰りつつある。女はぎすぎすした世界
に放り出される。なんだかやりきれない気分になる。
映像は静かで非常に美しい。男女が金魚の名前を付けるシーンが印象的。
不愉快な本の続編
とある男が田舎である呉から東京に出てきて定職に就かないで生活している場面を本人が振り返りながら語りかける口調での1人称ものです。例によって絲山作品の主人公であるのでノーマルに見えて実は、という部分もあるのですが、その語り口の滑らかさも加わって一気に読めます。
タイトルにある「不愉快な本」が何を指すのか?というのが疑問なんですが、物語の最後に参考文献として載っている中から推察するとやはりカミュの「異邦人」ということになるのでしょう。
その関連がどの程度なのかが分からないのですが、それでも充分楽しめる、読ませるチカラのある文章でした。特に面白かったのは、主人公乾とユミコが交わす会話の中に出てくる差別にかかわる性差の話しから共感の話しに流れていくことのリアルさは非常に上手いと思いましたし、納得してしまいました。
また、ファンタジー(性的なものを含む)に関連する可能性を潰してゆく話しについても頷ける表現でした。この方の直接描写をしないけれどあるキャラクターの会話や考えの中で説明するやり方で、ただ文字にするだけよりも数倍説得力がある、という腑に落ち方は毎回びっくりさせられますし、上手いと思います。
そして結末がいつもの絲山作品よりひとひねりしていると個人的には思います。そのことで、よく言えばいつもの絲山作品の面白さであり、悪く言うとマンネリに感じやすいとも言われる部分を変える要素で個人的には良かったと思ってます。『隠されていたわけでもないけれど後から明かされることの驚きの新鮮さ』はこの方でしか読めないものではないか?と思います。誰しもがびっくりするような大どんでん返しや価値観の崩れのような大きなものではない、しかし『だとすると、ああ!』みたいな小さな驚きが心地よいです。
カミュの「異邦人」が好きな方、絲山作品が好きな方にオススメ致します。
沖で待つ (文春文庫)
タイトル作品を含む短編が3つ。
すべての働くひとに、という帯に惹かれて買った。
どの作品も気持ちよく軽く、そして、何かこころにしみじみとひびく。
タイトル作、やはり会社で親しい同期というのは、会社の付き合い以上の存在なのだと思う。
すべてかなで書かれた「みなみのしまのぶんたろう」もおもしろい。
繰り返して2回読んだ。
これから社会に出て行く学生にもすすめたい。会社にはこんな世界もあります。と。