デイヴ・ディグズ・ディズニー+2
ブルーベックと言えば「テイク・ファイブ」が有名だが、最高傑作はこのアルバムではないだろうか。ディズニーの曲の楽しさ、ジャズの楽しさが満喫できる一枚。もし「ジャズ傑作100選」などという企画があったら必ず入る一枚。「いつか王子様が」「星に願いを」「不思議の国のアリス」などなど。相棒のポール・デスモンドの暖かみあふれるアルト・サックスも聴き所。(松本敏之)
Time Out
僕が最初にモダンジャズを意識して聴いたのがこのアルバムにあるテイク・ファイブではないかと思う。それは1960年代前半のことだと記憶する。その前にもディキシーランド・ジャズやスイング・ジャズさらにモダン・ジャズも耳にしていたと思うが、明確に「この曲はなんだろう」と意識し気にしつつ「これがモダン・ジャズなのか」と思ったのがこれだった。テイク・ファイブという曲名も割合早く知ったし、5/4拍子の変拍子ジャズだということも知った。おそらく姉に教えられたのだと思う。そういえばビートルズやローリングストーンズも姉からの入れ知恵で小学生ながらその存在を知った。確か背広のコマーシャルでこの曲が流れていたはずだ。50過ぎの世代には懐かしいテレビの一コマなのではないだろうか。その後ドリンク剤のCFでも使われたし、その意味では最もポピュラーなモダンジャズの名曲だといえる。ブルーベックが白人のピアニストの一番人気の座をずっと占めていたことを知ったのはもっと後からだが、ポール・デスモンドの美しい転がるような音色のアルト・サックスに当時魅了されたし、ジョー・モレロのドラムのリズムの正確さとスリル満点の即興性にも引かれた。いずれにしても最初の出会いは初恋のような甘酸っぱさがあり、いつ聴いても心がわくわくする。